愛知県出身 三重県いなべ市在住。
浦田 貴秀さん
写真家
映像・写真のフリーランスの他に、いなべ市の写真館『鈴麓寫眞』、
アートディレクター、カメラマンとして様々なチームに所属している。
写真を通して
町と、人と、コミュニケーションを取っていく。
まずは浦田さんのフォトグラファー・ビデオグラファーとしての仕事内容や経緯を教えてください。
高校は名古屋の普通科でした。一般企業に就職するイメージもなく、かといって専門学校も当時「これがやりたい」というのもなかったので、「とにかく自分が好きなこと・興味がある仕事をしてみよう」と販売系のバイトをして生活をしていました。その後、プロのスノーボーダーになるべく本格的に活動を始めます。スノーボードパークで働き、プロデュースなどにも関わっていました。約6年間この生活が続きましたが、27歳の時にこのスノーボーダーとしての生活を辞めました。好きなことだけをして食っていくというスタイルはやめよう、しっかり落ち着いて普通に就職しようと思ったタイミングで、当時付き合っていた彼女(現在の妻)がいなべ市に引っ越すというので、僕もこの地で仕事を探し、いなべ市の工場で3年間働きました。就職してお金を貯めて結婚して、自分で何かをしたいと思っていたので、30歳の時に映像の仕事をフリーランスで始めました。スノーボード場の社員時代に映像を撮っていたので、その延長線ですね。この時代は自宅で仕事をしていて、三重県を中心にテレビなどのメディア・広告・ウェディングと映像に関わる仕事をしていました。元々、映像のための写真を撮るようになり写真を始めたのですが、34歳の時にフォトコンテストで賞をいただいたことがきっかけで、写真の仕事を本格的に始めました。
写真という文化を
ローカルで繋げる
動画から始まり写真に移行したんですね。今は、写真家としてのイメージが強いのですが、フリーで仕事を受けること以外にも活動はされていますか?
フリーとして広告写真の仕事は続けつつ、コロナ前に『写真館』をひっそりと始めました。写真館を開くきっかけは、いなべ市内に写真館が一つもなくなってしまったことでした。町の人が写真を撮りにいく場所=写真館、そういう場所が一つもないということは自分自身も嫌だなと思いましたし、文化を断つことにもなります。自分がカメラを生業にしているのであれば、町とのコミュニケーションを取るという意味でも写真館を始めた方が良いと強く思いました。
僕は企業やアーティストと関わる仕事でしたので、地域の人との関わりはなかったんです。だから、ここで自分が持っているものを提供してコミュニケーションを取ることが必要だと思いました。デザイナーやカメラマンの実態って、よくわからないと思うんです。それを身近に感じてもらう場所がないと、そういう文化がローカルで繋がっていかないんじゃないかなーと。なるべく自分が店に居て、町と人とコミュニケーションが取れる環境を作り、さらにこういうことをしてみたいと思ってくれる若者が出てきたら…と思った次第です。
そして38歳の時、本屋・雑貨屋・珈琲屋と共にメゾン形式の『メゾンヒガシマチ』を開店しました。風が通るこの場所を気に入り、コミュニケーションを取るなら、ここがいいんじゃないかと思い移転をしました。
確かに。この道沿いは良いですね。ガラス張りで中の様子が見えますし。通りを歩いていたら、雰囲気が伝わるじゃないですか。
そう! ふと見て、「あー自分もまた写真を撮ってもらおう」と思ってもらえる人が少しでも居たら嬉しいな。写真館だけじゃもったいないから、展示会をしたりとギャラリーやイベントの要素も含みながらやっています。
お客さんと一緒に写真を選ぶ。撮影中と同じくらい盛り上がる時間。
町の住人と。同市でイベントがあるためフライヤーを持ってきた。
自分がやることに意味がある
面白いが要のディレクション
写真館での仕事の他に、亀山にある野菜料理店『ひのめ』の写真を撮っているのも浦田さんですね。
『ひのめ』は写真を撮るうちに店主の上谷君と「魅せ方はこうした方がいいんじゃないか」などと話すようになり、いつのまにか「相談役」という立場になっていました。彼はめちゃくちゃ美味しい料理を作るので、そのポテンシャルを活かさないともったいないと思ったんです。ここからディレクションするということに魅力を感じ始めました。
その後、宇賀渓観光協会から『竜のコバ』という案内所のロゴと店舗の展示物エリアのディレクションを任されました。「浦田さんの思うようにやってください」と言われ、結果「いいね」と言ってもらえて、いなべ市のまちづくり情報誌『inabe NOWTO』の案件相談が入ってきました。これは、『メゾンヒガシマチ』の本屋『granne308』の店主でもあり、『granne design』のデザイナー・ライターでもある山下佳苗さんと一緒に作成しました。
自分が関わる意味がないと動けないので、自分が思っている一番いい形を表現したい。クライアントの想いをクリエイティブでどう導くかが大切。多種多様な業界ですが、ディレクション業はやってみたかった仕事です。その部分の人材は圧倒的に足りてないと思うので、常に自分自身をアップデートしていけるようにしています。
『ひのめ』では写真の撮影と共に、ディレクションも。
色々な人と色々な仕事をする
チームに属することで広がる可能性
さらに最近、色々な著名人と行動を共にしていますね。まず思い浮かぶのは全国でパン屋をプロデュースしているベーカリープロデューサーの岸本拓也さんです。彼とはどのように知り合ったのですか?
岸本さんが四日市・桑名・いなべに出店した時、偶然いなべ市の冊子を見て、僕が撮った写真に目が留まり「浦田くんの写真が好きでこの写真が気に入った」とオファーをくれたんです。空気感が出る写真が撮れるカメラマンを探していたらしく、ブランディングに関わってほしいと誘われました。こうして僕はカメラマンとしてクリエイティブチームに入れてもらえたんです。仕事としては自分がこれまでやってきたことをそのまま出しているだけです。岸本さんには「浦ちゃんの表現したいように撮って」と言ってもらえていますので。僕はこの人と一緒に面白いことをしたい、このチームの替えのきかないピースになりたいと思っています。岸本さんは愛に溢れた人で、お互いにリスペクトし存在価値が合致しています。このチームは個が集まり、個を活かしてコミュニケーションを取っていける場。「良い」と言ってもらえるので、仕事はもちろん楽しいですし、自分としては面白い場で、三重を飛び出してもやっていけるという自信にも繋がっています。そして、ここでの学びが、自分のディレクション業にも活かされています。
岸本さんと。ブランディングの手伝いで、ベトナムへ同行。
近頃の浦田さんは飛び回っているという印象です。最近また新しいことを始めたそうですね。
一番最近ではアパレルのOEM(セレクトショップなどブランドの製品を生産するメーカー)を中心とした会社を経営する楠井靖人さんが、いなべ市に事務所を移し、更にカフェ併設のコンセプトストア『榑えん(ぐれえん)-GreEn』をオープンするということで、その店が出来ていく写真の撮影を依頼されました。楠井さんと意気投合し、「浦ちゃん一緒に何か面白いことしない?」から始まり、『榑えん』の横に建つ倉庫をクリエイティブオフィス『pebble-ペブル』にすることになったんです。ということで、僕らはここでクリエイティブチームを作り、町を面白くすることを着々と進行中です。
楠井さんと。コンセプトショップ・カフェ『榑えん』の前で。
最後に、浦田さんが考えている未来像を教えてください。
年齢や性別問わず一緒に楽しいことをする=遊ぶことで自然にカルチャーを学べる。面白いじゃん、かっこいいじゃんと思える場所を作ることでスタイルを築いていく。どんな服を着て、どんな遊びをするか。どう遊ぶかが要なんですが、結局、僕が遊びたいんです。(笑)ここにくることでリフレッシュできたり、コミュニティーが増えたりすると同時に観光流入にもつながると思います。これは町の住人の張り合いにもなりますし、本当の意味でのエモーショナルなんじゃないかと。
INFORMATION
本屋・蝋燭 『メゾン ヒガシマチ』
定休日 月・火・水曜日
営業時間 11:00〜17:00
TEL 0594-37-5289
Instagram m_higashimachi
※お店の情報が変更になる場合がございます。詳しくは、各店のHPやSNSでご確認ください。
INFORMATION
榑えん (GreEn)
定休日 火・水・木曜日、臨時休業あり
営業時間 金土13:00〜22:00
日月13:00〜18:00
TEL 050-3595-1854
Instagram green_kitaise
※お店の情報が変更になる場合がございます。詳しくは、各店のHPやSNSでご確認ください。