三浦 直之

ロロ主宰 | 劇作家 | 演出家 | 脚本家

10月29日生まれ 宮城県出身
2009年、日本大学藝術学部演劇学科劇作コース在学中に、処女作 『家族のこと、その他たくさんのこと』が王子小劇場「筆に覚えあり戯曲募集」に史上初入選。 同年、主宰としてロロを立ち上げ、全作品の脚本・演出を担当する。 自身の摂取してきた様々なカルチャーへの純粋な思いをパッチワークのように紡ぎ合わせ、様々な「出会い」 の瞬間を物語化している。2015年より、高校生に捧げる「いつ高シリーズ」を始動。高校演劇のルールにのっとった60分の連作群像劇を上演し、戯曲の無料公開、高校生以下観劇・戯曲使用 無料など、高校演劇の活性化を目指す。そのほか脚本提供、歌詞提供、ワークショップ講師など、演劇の枠にとらわれず幅広く活動中。
2016年『ハンサムな大悟』第60回岸田國士戯曲賞最終候補作品ノミネート。

イラスト/西村ツチカ

いつ高シリーズとは

「いつだって可笑しいほど誰もが誰か愛し愛されて第三高等学校」通称「いつ高」が舞台となる、
高校演劇のフォーマットにのっとった60分の連作群像劇。
あらゆる場所で「まなざし」をテーマにこれまで10作品が発表されている。校内で起こる小さな事件の
“ここ”と“あそこ”がまなざしで繋がれていき、シリーズ全体で大きな物語となっている。

Q1 なぜ三重県で行ったのか 教えてください。

三浦 三重県の文化会館の方と面識があって、高校生向けのシリーズをやっているっていう話をしたら、「じゃあ三重県で高校生と企画をやってみない?」とお話をいただいたのがきっかけですね。

石川 それは一つ返事でお受けしたのですか?

三浦 そうですね。ぜひやりたいですって言って。

石川 ロロや普段三浦さんが活動されている拠点は東京だと思うのですがそこに懸念点はなかったのですか?

三浦 東京が拠点でもあるけれど僕自身が宮城県出身で、現在は宮城県と東京都を行ったり来たりしながら活動をしていたりするので東京にこだわりは全くなく、色々な場所で、クリエーションする機会があったら嬉しいなって思いますね。

Q2 いつ高の台本はどこか懐かしく「経験してた!?」という気持ちに なります。作る際に心がけていることはありますか?

三浦 僕自身いつ高シリーズのような高校生活を一切送ったことがないので自分にとって懐かしい瞬間は描かれてはいないのですが、ずっと青春小説や青春映画を見てきて、好きだったああいう世界を舞台にしてみたいと思っていつ高シリーズを始めたので、フィクションの中で体験した青春みたいなのが作品に入り込んでるんだと思いますね。

石川 劇中のような学生生活を送ってみたいという気持ちも入っていますか?

三浦 いや、それを自分が送りたかったということは思ってないですね。

石川 いつ高シリーズを観ている方にどういう気持ちを伝えたいですか?

三浦 僕が高校演劇の大会の審査員をやらせてもらうようになり、いろんな制約の中で上演している高校演劇ってすごいなと思って、自分もそのルールで始めるというのをいつ高シリーズを始める時に決めていました。
高校生が自分たちでオリジナルの作品を上演するのが一番素敵だなと思うのですが、自分たちでなかなか脚本が書けない演劇部もあり、そもそも60分の戯曲ってすごく少ないんですね。選択肢が限られているのでその選択肢を増やせるようになるといいなと思います。そしてもう一つ決めていることがあって、いつ高シリーズでは物語の中で登場人物たちを成長させないということです。高校演劇に限った話ではないですが、60分の中で登場人物が葛藤を乗り越えて成長する物語が多いなっていう印象があって、それはそれで良いのだけど、成長しなくたって葛藤を抱えなくたって、作品は作れるということを提示したいという気持ちが大きいですね。

石川 だからあのリアル感なんですね。どこか懐かしいというか親しみやすいというか、高校生時代のあの感じ。その中でも面白い要素が散りばめられているから一つの作品として成り立っているんですね。

三浦 うれしいです。ありがとうございます。

いつ高vol.1

Q3 実際に高校生と作品を創ってみて どう思いましたか?

三浦 現役の高校生といつ高を創るというのが初めてだったので僕もすごく楽しかったです。ロロでいつ高シリーズをするときは高校生を終えた20代、30代の俳優と一緒に創っているので、現役の高校生が演じると会話のテンポ間やノリがこんなにも違うんだと思ってとても新鮮でしたね。

石川 それは私もロロの皆さんに感じました。プロだけどあえてプロ感を消す。とても自然に演じられていてやはり高校生の私たちとは違うな。すごいなと当時思いましたね。

三浦 それはうれしいですね。ありがとう。

Q4 今後どのような作品を創っていきたいか教えてください。

三浦 いつ高シリーズが全部で10作で完結し、これまでは10代の物語を創ってきましたが、今のメンバーが僕も含めて30代半ばから30代後半になったので、ただの高校生の物語じゃなくて今の自分たちの年齢に合うような、そんな物語を創っていきたいですね。

石川 演劇以外のお仕事ではどのような作品を創っていきたいですか?

三浦 映像のお仕事は、お話をいただいて僕が力になれそうなら参加させていただくという形なのでこうなりたいはないのですが、テレビやドラマや映画も好きなのでこれからも映像の活動はやっていきたいですね。

石川 ロロでは三浦さんが自由にやりたいことをやられているのですね。

三浦 そうそう。自分のやりたいことはロロでやってますね。外の仕事はまた違う方たちと一緒に創るのでその方たちが自分に求めていることや、どういう世界を創りたいと思っているかを大事にしたいと思っていますね。

ロロ舞台写真/四角いふたつのさみしい窓

Q5 三浦さんのターニングポイントを 教えてください。

三浦 舞城王太郎という大好きな小説家の方がいてその方の本を読んだっていうことがすごく大きいかな。いまだに大好きな作家さんです。

石川 どのような小説ですか?

三浦 純文学のジャンルで三島由紀夫賞を受賞した『阿修羅ガール』という小説です。すごくぶっ飛んだお話で、小説でこんなことできるんだという衝撃を受けましたね。

石川 たくさんの小説との出会いがロロを立ち上げるきっかけとなったのですね。

三浦 そうですね。中学生、高校生ぐらいから小説や漫画、映画をたくさん見て「あ、自分はこういうの作りたい」って思うようになりました。母親がすごくテレビが好きで、テレビドラマのシナリオ集がたくさん家に置いてあったんですね。それをパラパラ読んでいると著者の経歴が日本大学芸術学部卒という方が多くて、中学生の時に日本大学芸術学部に行きたいと思いました。

石川 演じる側をやってみたいと思ったことはなかったのですか?

三浦 最初からずっと物書きになりたいと思っていて、舞台に立ちたいと思ったことはなかったですね。脚本を書きたいとか映画監督になりたいとかそういう方向でしたね。

Q6 今号のテーマが「はみだせ」なのですが、 最近、はみだしたなという経験はありますか?

三浦 2年ぐらい前から本格的に東京と宮城県を行ったり来たりする生活になり、どちらでもで暮らすというライフスタイルに変わったっていうのは『はみだしてる』と思いますね。

石川 どのぐらいの割合で行き来されてるのですか?

三浦 仕事にもよりますが、演劇の稽古は東京でやることが多いので演劇の稽古があるときは東京にいるけど、それ以外の執筆とかは宮城県にいることが多いですね。僕が人混みがあまり得意ではないので、東京は人が多くて疲れてしまうし、情報がすごく多い。それが刺激的で楽しいこともあるのですが、ちょっと疲れてきたなって思ったときに宮城県に戻るのもありかなって思って、行ったり来たりするようになりました。

石川 執筆中は缶詰状態だったりしますか?

三浦 缶詰とまではいかないけどルーティンは決まってますね。散歩する時間があって喫茶店で本読んで執筆して、みたいなサイクルがあったりしますね。

石川 年に何本も台本をお書きになると思うのですが頭の切り替えはどうしていますか?

三浦 散歩とサウナですかね(笑)あとは読書ですね。

石川 逆にインプットするんですね。

三浦 インプットはすごい自分の中で大事で、本を読む時間を確保するためにどういう風に生活するかを考えてますね。

Q7 三浦さんのキニナル人を教えてください!

三浦 友達でアニメーション作家のひらのりょうさんです。

石川 ひらのりょうさんのどういうところが気になりますか?

三浦 一緒に作品を創ったこともあるのですが、まず本当に魅力的で素敵なアニメーションを創る方だなと思います。ひらのさんもずっと東京で活動してたんですけど、何年か前から長野県富士見町に移住して野菜を育てたり、町の人たちと一緒にいながら作品を創ったりしていて。その暮らしもすごく素敵だなと思います。まだ遊びには行けていないけれど早く遊びに行きたいです。

石川 アニメーションという二次元の世界と山で過ごす、真逆の世界な感じがしますね。

三浦 たしかに。ひらのさんの暮らしの話とかもすごい面白いですよ。

石川 ひらのさんとはどうやって知り合いましたか?

三浦 ひらのさんが元々ロロを見てくださっていて、僕もひらのさんのアニメーションを見たことがあったのでそこから一緒に作品を創ることになりました。その後ロロの作品のオープニングアニメーションを創ってもらい、俳優としても舞台に出てもらいました。俳優としてのひらのさんもめちゃくちゃ素敵なんです。

石川 三浦さんのキニナル人、ひらのりょうさんと次号にてお話できること、とても楽しみです。

イラスト/ひらのりょう

Information

■主催

AOI Pro.コント公演『混頓 vol.5』

■作・演出

水川かたまり(空気階段) 三浦直之(ロロ)

■出演

原嘉孝 小栗有以(AKB48)
井頭愛海 有野晋哉(よゐこ)

■公演日程

2024年11月15日(金) 〜 17日(日)

■場所

TOKYO FMホール


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