夫婦二人の小さな和菓子屋『いなべ菓子店八舎』

自分たちの気持ちに正直に、みんなに喜んでもらえるこの仕事を続けていきたい。

Naoyuki/Aki Uno

宇野尚之さん

四日市市富洲原町生まれ。高校卒業後、株式会社『赤福』に入社。
入社と同時に『赤福』の社員として東京製菓学校に入校。
菓子開発、製造勤務を経て退社。25歳でサラリーマンになる。
37歳の時、家族でいなべ市に移住。
2021年10月、いなべ市北勢町に『いなべ菓子店八舎』を開く。

宇野亜記さん

伊勢市出身で、株式会社『赤福』に事務員として入社。
『赤福』で尚之さんと出会う。
退社後、結婚を機に四日市市へ。
夫と息子の家族3人でいなべ市に移住。
『いなべ菓子店八舎』を開く。

まずは尚之さんの経歴を教えてください。

尚之　生まれは四日市で、高校卒業後、伊勢の『株式会社赤福』へ入社しました。『赤福』の社員として、知識を得るため『東京製菓学校』へ通った後社内で半日は製造・半日は新商品を開発していました。25歳の時、6年間勤めた『赤福』を退社し、サラリーマンとして働きだしましたが、家では自分が食べたい和菓子を作り続けていました。そんな中『かりんとう饅頭』を初めて食べた時「なにこれ！」と衝撃を受け、すぐに調べて自分で作りました。『赤飯饅頭』も地元四日市では食べられなかったので、自分で作っていました。
これが今の『八舎』の商品に繋がっています。

次に結婚後のことを教えてください。

亜記　私は出身が伊勢で『赤福』に勤務しており、お互いが退社後に結婚し四日市へ引っ越しました。その後、田舎独特の四季を感じる雰囲気が好きで、家族でいなべに移住しました。いなべを盛り上げようとしている人がたくさんいて、私たちも自然に「いなべの名物作りたいね。」と和菓子を作り始めていました。そのころ店舗がなくても自分たちが作ったものを売れることを知りました。『桐林館』の帖佐さんに誘ってもらい不定期販売がスタートしました。これがきっかけで『八舎』として販売を開始しました。『happy muffin』主催のマルシェにも出店しました。想定外にお客様が並び、他のイベントからも声をかけてもらい、夫の本業のサラリーマンと副業の和菓子屋の比重が変わり始めました。

尚之　のってきた矢先にコロナが流行りイベントがなくなり、前日に中止が相次ぎました。「ロスをどうしよう。」と、この1、2年ずっと悩んでいました。いなべの農家さんの小豆やお米、お茶を使っていたので、それを捨ててしまうことは計り知れないストレスでした。そして「店舗を持ちたいな」と考えるようになりました。実際に富洲原にあるキッシュ屋『cacca』の店舗で売ってもらったことが何度もあり、助けられました。

亜記　ただ、「店舗を持つのは簡単にできることではない」と現状維持で足踏みをしていた2021年の夏、まとまって考える時間が取れました。今しかないと思った時に、この建物にも出会い10月にオープンすることができました。

『八舎』をオープンされていかがですか？

亜記　『八舎』では、「お客様が美味しかったよ！」と直接伝えてくれます。地元の方に来ていただいているのがとても嬉しいので、それが一番のやりがいです。（でも毎日プレッシャーがあるので、神社に手を合わせに行っています。）『八舎』の八も、いなべにあやかった名前にしたくて八幡祭りから取りました！『八舎』を知ってもらうことももちろんですが、いなべを知ってもらうキッカケになれば良いなと思っています。

尚之　どら焼きが大好きでずっとやりたいとは思っていましたが、よくある商品なので、阿下喜の名物になるべく試作を繰り返し、今の商品にたどり着けました。〝かりんとう饅頭と、どら焼きのお店〟というのを定着させたくて、準備してきたので、自信を持って出せるメニューです。これを目当てに何度も買いに来てくれるお客様が居るのも嬉しい限りです！

お二人の今の想いを教えてください。

亜記　自由に動けない期間が長くて、どうやって乗り切るんだろうと思う気持ちもありますが、美味しいものを食べているときはみんなが幸せです。みんなが笑顔になってくれたら、それが私たちにできることなんだと思います。『八舎』を始めて仲間ができ、人生が面白くなりました。

尚之　今の私たちが在るのは周りの人たちが助けてくれたからです。たくさんの方と出会えるイベントも、この『八舎』も大好きです。
あと、あんこの味はごまかせないので、ひたすら真摯に小豆とむきあっています。今までがむしゃらにやってきたことを、これからも変わらずしていきます。

店舗を持つことに足踏みしていましたが全てのタイミングが奇跡的に重なり無事開店することができました。人生は自分で変えていけるんだと気付きました。

二人の想いがぎっしりと詰まった商品を、ゆっくりと味わいたい。味の種類が豊富なのも魅力。

INFORMATION

いなべ菓子店　八舎