「食」というものを、みんなに平等に楽しく伝えていきたい。
Tomohiro Uetani
上谷 朋大さん
1993年、三重県生まれ。料理人。
調理師学校卒業後、
星付きレストランにて研鑽を積んだ後、渡豪。
メルボルン、シドニーの
農場やレストランなどで経験を積む。
現在は亀山市『ひのめ』にて
地元の素材を生かした
独創的な世界観の料理を提供。
料理人として、食育・疾病予防・食料廃棄等の
問題にも着目し、日々「食」と向き合っている。
学生時代と、卒業後の就職時代について教えてください。
高校は三重県内の進学校でしたので大半の人が大学へ進みましたが、僕は専門学校へ進路を希望する少数派だったので、遊んでいた記憶しかありません。笑
卒業後は大阪の調理師専門学校で料理の基礎を学び、初めて触れたフランス料理に感銘を受けました。そしてそのままバイト先のレストランに就職し、5年ほど基礎を学びました。料理に一番没頭していた時で、その時はただ〝かっこいい仕事をしている〟とか〝有名なレストランで働いている〟といったことが日々のモチベーションになっていた記憶があります。
その後、渡豪されたそうですね。オーストラリアでの話を聞かせてください。
オーストラリアでは農場やレストラン・カフェなど色々なところで働きながら英語を学習していました。自分の中で農場での経験が大きいのですが、初めて生きている鶏を絞め、捌き、食べた時は泣きそうになりました。今まで食材を当たり前に扱ってきた僕にとってかなりショッキングな出来事でした。食に携わっていたら当然のことと言われればそうなのですが、食への考え方が180度変わったのは明らかにこの時です。今までモチベーションとなっていた料理の見た目ではなく、食と深く向き合うキッカケになりました。その後働いた高級レストランで疑問が生まれました。〝いのちをいただく〟という経験を目の当たりにした後に働いたこのレストランは、食べられる食材を当たり前のように捨て、きれいな所だけお客さんに提供するというような調理方法でした。「調理ではなく、料理をしたい。日本でも同じことが起きている。僕がやりたいことはこれではなく、この現状を日本でも伝えていくことだ」と思い、帰国しました。
この場所との出会いは? どうしてコース料理の店を出そうと思ったのですか?
元々は前にオーナーがおりまして、前オーナーの意向で僕がお店を継承した形になります。
コロナが流行り出す直前に引き継いだので、「さぁ、どうしよう。」と、色々考えていましたが、コース料理にすることが僕が食を通して伝えたいことが一番伝わりやすいと思ったので今の形態にしました。現在『ひのめ』の撮影をお願いしている浦田カメラマンとの雑談で〝僕が今一番したいことは何か〟を掘り下げました。そして周りを見てもどうしようもないし、今自分が一番やりたいことを仕事にしていけるようにしていきたいという思いが強くなりました。
『ひのめ』はどういう場所でありたいですか? また上谷さん自身は、どうありたいですか?
地元の素材を生かした、野菜料理を提供しています。今は〝目の前のお客さんに満足してもらうこと〟それだけですね。そして『ひのめ』は〝考える場所〟でありたいと思っています。それはもちろん食のこともそうですが、ここに来ることで日々の生き方を再考できる場所になれたら嬉しいですね。
僕自身は料理人として、食育・疾病予防・食料廃棄等の問題にも着目し、日々「食」と向き合っています。今後は食育を伝える活動を始めていこうと思っておりまして、子供達に平等に楽しく食を伝えていきたいです。近い将来は〝食育の先生〟としてお仕事をいただけるようになりたいですね。教育機関以外の場で何かしようとすると、基本的に挙手制になります。それでは意識ある人には届くかもしれませんが、そうでない人には伝えにくい。学校教育という場を通して食を伝えていくことで、皆に等しく食育を受けてほしいのです。
一皿一皿ていねいに調理した料理をゆっくりと味わっていただきながら「食べること」そして「生きること」をじっくり考え直し、語り合うきっかけになっていただければ。
『ひのめ』では、市場に出せない野菜を積極的に使用している。また、庭に鶏を飼い、餌は廃棄食材を、そして産まれた卵を料理に使用するという、この空間の中でのサイクルを作っているそう。
INFORMATION
ひのめ
昼餉 11:00〜15:00 火曜、水曜定休
夕餉 18:00〜22:00 火曜、水曜、木曜定休
0595-83-4769
Instagram : hi__no__me
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